結論から言うと、EOS R5 Mark II は LP-E6 マウントを踏襲しているため、LP-E6NH どころか LP-E6N でも装着して普通に電源が入り、撮影できます。ただし高ビットレート動画、高速連写、長時間の連続録画といった高負荷の場面では、旧電池の持続放電能力が足りず、ボディは一部機能の制限や連写速度の低下によって回路を保護します。現れ方は「機能がロックされる」「速度が落ちる」であって、「電池が尽きる」ではありません。これは電池が劣化しているかどうかとは関係なく、新品の LP-E6NH でも同じ制限に当たります。
この点を理解しておくことが重要です。多くの人は偽物の電池をつかまされたと思い込みますが、実際にはボディが給電能力に求める水準が上がったということです。
R5 Mark II の消費電力構造は前世代と違う
R5 Mark II は動画の仕様、処理性能、連写速度のいずれも向上しており、その向上がそのまま持続電流の需要増に変わっています。
- 高ビットレート動画:8K と高フレームレート 4K では、センサーとプロセッサーが長時間フル稼働します。電流需要は大きいうえに、安定していることも求められます。
- 高速連写:電子シャッターでの高速連写は大量のデータ読み書きを伴い、瞬時の消費電力ピークが高くなります。
- 持続的な放熱と演算:機内処理の負担が増え、本体の平均消費電力が上がります。
こうした場面での電池の役割は、単なる「給電」ではなく「電圧の安定」です。電圧が引き下げられた時点で、ボディは「走り続ける」か「回路を保護する」かを選ばなければならず、通常は後者を選びます。
旧電池が制限される具体的な症状
| 電池の型番 | R5 Mark II での状態 | 典型的な挙動 |
|---|---|---|
| LP-E6P | 純正の標準品で、完全に対応 | 高ビットレートと高速連写をボディの仕様どおりに実行できる |
| LP-E6NH | 装着でき使用できるが、一部機能は制限 | 高負荷モードで制限され、連写速度が落ち、録画時間が短くなる可能性 |
| LP-E6N | 装着でき使用できるが、制限はより明確 | 持ちがさらに短く、高負荷時の速度低下が早く現れる |
| LP-E6 | 装着できるが、すでに旧規格 | 動画や連写には推奨せず、軽い静止画撮影向け |
表の「制限」はファームウェアのバージョンによって具体的な項目が異なる場合があります。ボディの説明書とメニューの表示を基準にしてください。ただし方向性は一貫しており、電池の放電能力が低いほど制限される機能が増えます。
なぜ電圧降下が「機能ロック」を招くのか
リチウムイオン電池は放電時に、電流が増えるほど端子電圧が下がります。これは内部抵抗によるものです。内部抵抗が大きく、電流が大きいほど、電圧降下は顕著になります。
ボディには電圧を監視するロジックがあります。電圧が安全動作の下限に近づいたことを検知すると、段階的な措置を取ります。まず処理負荷を下げ、次に高消費電力の機能を制限し、最後に残量不足を表示して停止します。このロジックの目的は電池の過放電と回路の過負荷を防ぐことで、その代償が使える機能の減少です。
ですから「残量 40% あるのに 8K が録れない」は正常な現象です。電力量が足りないのではなく、瞬時の給電能力が足りないのです。LP-E6P が存在する意味もここにあります。容量が大きいのではなく、高負荷でも電圧を安定させられるのです。
混用の方針:新旧の電池をどう回すか
LP-E6P と LP-E6NH を同時に持っているのはよくある状況で、とくに R5 から乗り換えたユーザーに多いはずです。次のように割り振るとよいでしょう。
- LP-E6P は主力の位置に:高ビットレート動画、高速連写、重要な現場はすべてこれで行います。
- LP-E6NH は予備の位置に:静止画、タイムラプス、インタビューといった低負荷の場面、または主力電池が尽きたときの緊急用です。
- 交換は場面を先に見て決める:このあと高規格の動画を撮るなら、LP-E6NH に残量があっても LP-E6P に替えておく。撮影の途中で制限を受けるのを避けられます。
- 旧電池をボディに長期に入れたままにしない:長期保管は取り出して単体で、半分ほどの残量を保って保存します。
- 番号順にローテーションする:複数の電池に印を付け、1 本だけ長く眠って劣化が早まるのを防ぎます。
補足すると、LP-E6NH が R5 Mark II で「制限される」ことは「使えない」こととは違います。日常の撮影、単写の静止画、通常の 4K なら十分にこなします。ボディの上限性能が必要になったときに、支えきれないというだけです。
充電と周辺
LP-E6P と LP-E6NH はどちらも USB-C の直充電ポートを持たず、充電はクレードル LC-E6 / LC-E6E か、ボディの USB-C 経由で機内の電池に行います。2 種類は同じクレードルを共用できますが、サードパーティー製クレードルに LP-E6P 対応の表示があるかを確認してください。表示がなければ満充電にならない、充電時間が異常になるといったことが起こります。
まだ R5 や R6 を使っているなら、このために電池を替える必要はありません。その 2 台は給電設計の基準が LP-E6NH だからです。関連する違いはLP-E6NH のカテゴリーページ、およびLP-E6P のカテゴリーにある互換境界の説明で照らし合わせてください。
よくある質問
R5 Mark II では LP-E6P が必須ですか?
必須ではありませんが、ボディの仕様を出し切るなら必要です。LP-E6NH でも普通に撮影でき、高ビットレート動画や高速連写の場面で制限を受ける可能性があるというだけです。静止画や通常の動画が中心なら LP-E6NH で足ります。
LP-E6NH を R5 Mark II で使うとボディが傷みますか?
傷みません。キヤノンが対応する下位互換の範囲にあり、ボディの保護ロジックが進んで負荷を制限するため、電池や回路が過負荷になることはありません。
同じ LP-E6NH が R5 では問題なく、R5 Mark II では制限されるのはなぜですか?
2 台の消費電力設計が違うからです。R5 の給電基準は LP-E6NH で、R5 Mark II の基準は LP-E6P に引き上げられました。同じ電池でも、ボディが違えば残される余裕が変わります。
サードパーティー製の電池は LP-E6P の代わりになりますか?
現状、この規格帯におけるサードパーティー品の適合度は玉石混交で、識別や持続放電の挙動に差が大きいです。R5 Mark II のようにボディ側の適合に強く依存する機種では純正を優先し、サードパーティー品は緊急用にとどめるのが無難です。