「1年たつと明らかに持ちが落ちる」という現象は気のせいではなく、電池の性質によるものです。リチウムイオン電池の容量は充放電回数と経過時間に応じて少しずつ減り、おおむね 300〜500回の充放電で公称の 80% 程度になります。つまり1年での低下は想定内で、2年前後で本格的な交換を検討する時期です。ここで分けて考えたいのが「ゆるやかな劣化」と「急な劣化」です。前者は自然な老化ですが、後者は過放電や高温下での満充電放置、セルの異常が絡むことが多く、対応が変わります。
劣化はどのように進むか
充放電を繰り返すと、正極・負極の材料で不可逆の副反応が起き、使えるリチウムイオンが徐々に減っていきます。同時に内部抵抗も上がります。表に現れるのは2点で、入る電気の量が減ること(容量低下)と、大電流を流したときに電圧が落ちやすくなること(内部抵抗の上昇)です。後者のほうが先に気づかれやすい傾向があります。「減りが速い」と感じても、実は容量は10数%しか減っておらず、内部抵抗の上昇でボディが早めに「もう無理」と判断している、ということがあるためです。
- 通常の使い方:カーブは序盤なだらかで、ある地点から徐々に急になります。
- 深い放電の繰り返し:0% まで使い切るたびに劣化は進みます。
- 高温下での満充電放置:影響の大きな組み合わせです。夏場に満充電の電池を車内に置き忘れる、といった状況が典型例です。
- 長期の過放電放置:残量ゼロのまま放置すると、そのまま使えなくなる場合があります。
使用期間からの大まかな目安
| 使用段階 | 容量のおおよその水準 | 体感 |
|---|---|---|
| 半年以内、充放電回数が少ない | 公称に近い | 安定しており、公称値の 60〜80% 程度の実撮影枚数に収まる |
| 1年程度、通常使用 | 公称の8割台後半〜9割程度 | やや低下するが、1日の撮影には影響しにくい |
| 2年程度、300〜500回 | 公称の8割程度 | 負荷の高い撮影では予備が1本欲しくなる |
| 3年以上 | 8割を大きく下回ることもある | 減りが速い、メモリ飛び、ときどき電源オフ |
表はあくまで大まかな目安です。使用頻度、充電習慣、保管環境で実際のカーブは上下しますので、そのまま当てはめる必要はありません。
交換を検討すべき4つのサイン
- 同じ規格の別の1本より明らかに持ちが短い。比較検証でボディ側ではないと確認できている状態。
- 連写や電源投入の瞬間に電源が落ちる。しばらく置くと入るというパターンは、大電流時の電圧降下の典型です。
- 残量が2メモリからいきなり電源オフになる。充放電による表示のリセット後も変わらない場合。
- 同ロットの電池より充電時に明らかに熱い、または外装の膨らみ・変形がある(膨らみは直ちに使用中止)。
シーン別の交換ペース
- 週末中心の一般ユーザー:1本を2年程度使い、1日持たないと感じたら交換。2本ローテーションが目安です。
- 婚礼・商用撮影など負荷の高い方:1年半程度での計的な入れ替えがおすすめです。重要な現場には状態の怪しい電池を持ち込みません。
- 動画を撮る方:長時間収録は内部抵抗の影響を受けやすく、劣化に早く気づきます。ダミーバッテリーの併用も選択肢です。
- スタジオ・レンタル会社:番号と購入時期を台帳で管理し、ロット単位で定期交換すると管理が楽になります。
劣化をゆるやかにするには
- 深い放電より継ぎ足し充電。0% まで使い切る習慣を避けます。
- 長期保管は 残量 40〜60%、涼しく乾燥した場所(15〜25℃)、3か月ごとの補充電。詳しくは 長期保管の方法 をご覧ください。
- 満充電のまま長く置かない。特に高温環境は避けます。
- 複数本に番号を付けて順に使い、長期放置による過放電を防ぐ。
- 充電中は風通しを確保する。熱のこもりは劣化を早めます。
実践しやすい工夫は寿命を延ばす使い方にもまとめています。
2本まとめて替えるべきか
手持ちが同じ時期に購入したものなら、劣化の程度も近いのが普通です。1本が厳しくなったころには、もう1本も似た状態である場合が多く、この場合は2本まとめて替えたほうが手間も少なく、新旧混在による見通しの混乱も避けられます。本数の考え方は 1本か2本か、セットと単品の損得は セット購入の考え方 をご参照ください。
よくある質問
容量が 80% でも使い続けてよいか
使えます。ただし撮影可能枚数は減りますので、予備を増やすか早めに替える前提で運用してください。メモリ飛び、突然の電源オフ、膨らみが出た場合は直ちに使用を中止します。
半年で短く感じるのは正常か
まず設定・低温・表示のずれを除外します。それでも明らかに短ければ、使用頻度が高いか個体差がある可能性があります。一度販売元に相談してみてください。
新しい電池と古い電池を混在させてよいか
混在自体は可能です。ただし計画は状態の悪いほうに合わせて立ててください。新しい電池の感覚で本数を決めると、現場で足りなくなります。
交換した古い電池の処分は
まだ使えるものは予備や負荷の少ない用途に回します。膨らみ・変形・液漏れがあるものは有害ごみとして、自治体の区分に従って出してください。穴を開けたり燃やしたりしないでください。
交換の費用は想像より抑えられます。NP-FZ100 互換バッテリーは公称 2280mAh / 7.2V / 約16.4Wh、単電池 2,684円、1電1充 3,440円、2電1充 5,511円。容量を増やすなら TNP-FZ100(2400mAh/約17.3Wh) が単電池 2,948円、1電1充 3,704円、2電1充 5,988円です。ソニー純正の NP-FZ100 は1万円前後からとなります。ロット単位で入れ替えるスタジオ・レンタル会社は 卸・まとめ買いのご相談 へ。100個以上は別途お見積りです。