結論から言うと、LP-E6P をこの 2 台で使うときの「給電下限」は「まだ電源が入るか」ではなく「残量が少ないときに高負荷を支えて中断しないか」です。実用的な下限は、残量が 2〜3 割を切ったら最高規格の録画を始めないこと、電池 1 本で持ちこたえるより 2 本を回すほうが確実だということです。残量不足の表示が出たら、あと数十秒撮れるかに賭けず、ただちに高規格の録画を止めてください。
EOS R5 Mark II と EOS R1 はどちらも 2024 年発表の上位機で、標準の電池は LP-E6P です。ただし高負荷の場面はまったく同じではありません。R5 Mark II には 8K 級の録画需要があり、R1 はセンサーの画素数の水準から 8K を売りにしておらず、負荷はむしろ 6K RAW と 4K の高フレームレートから来ます。共通しているのは、持続放電電流への要求が R5、R6 の世代より高いことです。
一、「下限」の本質は容量ではなく電圧の問題
ボディが電池の状態を判断する根拠は端子電圧です。端子電圧はセルの開路電圧から、内部抵抗に電流を掛けた値を引いたものです。残量が多いときは開路電圧が高く内部抵抗も低いため、大電流を一気に引いても崩れません。残量が少ないときは開路電圧がもともと低く、さらにサイクルと温度で内部抵抗が上がっているため、同じ電流でも端子電圧は保護のしきい値を下回ります。
しきい値に触れると、ボディの挙動は通常、残量不足の表示、録画の自動停止、あるいは電源を切って保護するかのいずれかです。このとき電池にはまだエネルギーが残っています。高負荷ではそれを出せないだけです。「残り 1 目盛ある」と「8K が録れる」がまったく別の話になるのは、こういう理由です。
温度はこの問題を増幅します。低温では電解液の粘度が上がって内部抵抗が増し、端子電圧はより早く崩れます。高負荷の連続録画のあとは電池自身が発熱し、温度上昇が同じく内部抵抗を押し上げます。ですから同じ電池でも、冬の屋外と空調の効いた室内では、高規格モードの挙動が大きく違うことがあります。
二、3 種の負荷の給電圧力の比較
| 負荷の種類 | 電流の特徴 | 主な圧力の発生源 | 相対的な圧力 |
|---|---|---|---|
| 8K 級の録画 | 持続的な大電流 | センサーの読み出し、エンコード、放熱、カード書き込み | 最も高い |
| 6K RAW / 高フレームレート | 持続的な大電流で、ピークがより尖る | データ量、プロセッサー負荷、ストレージへの書き込み | 高い |
| 4K の通常録画 | 中程度の持続電流 | エンコードとモニター | 中 |
| 静止画の連写 | 短いパルス | AF とシャッター | 低い |
この表の使い方は「電池の割り振り」です。最も状態の良い電池を最も圧力の高い区分に回し、旧電池は通常録画に回します。逆にしないでください。劣化した電池で 8K を回し、そのあとボディの過熱を疑うような使い方です。
三、実行できる 5 つの下限ルール
- 2〜3 割の残量がレッドライン。この範囲を切ったら最高規格の録画は始めません。録れないからではなく、いつ止まってもおかしくなく、しかも中断はたいてい肝心なカットで起きるからです。
- 重要なカットは満充電の電池で。電池交換のコストは数秒、撮り直しのコストは半日になりかねません。
- 熱い状態のまま次の電池に替えない。1 本が熱くなるまで録って別の 1 本に替えても、ボディ内部の温度は下がっていません。2 本目はより厳しい環境で働くことになります。電池を替えるより、ボディを数分冷ますほうが効きます。
- 低温では先に温める。冬の屋外撮影では、電池を体に近いポケットで保温するほうが、バッグの外ポケットに入れるよりかなり長く持ちます。
- 固定機位は外部給電を優先。一部の機種は USB-C PD 給電に対応しており、長時間のインタビューやライブ配信では電源で電池を置き換え、電池は移動するカットに残せます。対応の有無はボディの説明を基準にしてください。
四、電池以外の変数と出発前チェック
メモリーカード。高ビットレート録画は書き込み速度への要求が高く、カードの速度不足やカードの温度上昇でも録画は中断します。この種の中断は給電不足とよく似た症状で、電池の問題と誤断されがちです。切り分けでは、使用可能と確認できるカードに先に替え、そのあと電池を替えると回り道が減ります。
放熱。ボディが過熱すると自主的に規格を下げるか録画を止めます。これは電池とは関係ありません。高規格の連続録画では、側面のカバーを開け、直射日光を避け、密閉したバッグの中で動かさないようにしてください。放熱がうまくいけば、同じ電池で走れる有効時間も長くなります。
出発前のチェックリストも同じ考え方で組めます。電池については、主力が 2 本以上あるか、そのうち 1 本は比較的新しいか、低温環境なら保温袋を用意したか、充電器とケーブルは揃っているか。ボディについては、ファームウェアが最近のバージョンか(一部の高規格機能はファームウェアの対応に依存します)、カードの空きが足りるか、録画規格とカード速度が合っているか。
このリストは煩雑に見えますが、「撮影の途中で止まった」という事故のほとんどを防げます。それに比べると、電池 1 本で何分録れるかを突き詰める意味は大きくありません。その数字はビットレート、温度、放熱、カード速度で変わり、自分の基準値だけが参考になります。LP-E6P と容量型電池の位置づけの違いはLP-E6P のカテゴリー、R5 や R6 で仕事をするならLP-E6NH のカテゴリーのほうが合っています。4 世代の外形と相互装着の関係はLP-E6 のカテゴリーの説明を参照してください。YO の LP-E6P 互換電池は 2 本目、3 本目として通常の録画区間をカバーする使い方に向いています。
よくある質問
残量 15% でも 8K は録れますか?
技術的には起動できるかもしれませんが、おすすめしません。低残量では端子電圧がもともと低く、高負荷の電流衝撃が重なると数十秒で保護が働きやすいです。「始められるが終われない」この状況は、残量不足の表示より厄介です。
2 本を交替で使うと、持ちは 2 本の合計になりますか?
近い値になりますが、単純な合計ではありません。交換の過程でボディの温度は下がらず、2 本目の環境はより厳しいため、実際の合計は 2 本を個別に測った値の和よりやや短くなるのが普通です。「1+1」で時間を組まないでください。
同じ電池が R5 では正常なのに、R5 Mark II では厳しいのはなぜですか?
2 台の電流需要が違うからです。R5 Mark II は高規格モードでより高い持続放電能力を要求し、劣化した電池は内部抵抗が上がっているため、この場面でより電圧が落ちやすくなります。電池が壊れたのではなく、このボディのピーク要求を満たさなくなっただけです。
ボディに「電池の通信異常」と出るのはどういうことですか?
多くは接点の酸化や汚れ、または電池の保護基板の通信異常です。まず接点を清掃して再試行してください。複数の電池で同じボディがエラーを出すならボディの接点を、同じ電池が複数のボディでエラーを出すなら電池自体の交換を検討してください。